2011年08月30日(火)
しわの新しい治療 ―エレクトロポレーション
美容皮膚科を受診される患者様の気になる症状として、しみ・くすみと並んで、しわ・たるみが挙げられます。表情の大きな西洋人は表情筋の動きによりしわができやすく、西洋人より皮膚の厚い日本人は、しわはできにくいものの、たるみが見た目の印象を老けさせ、気にされる方が多いといわれています。
たるみとは、加齢に伴い皮膚のハリが失われるため、垂れ下がり、皮膚の膨らみが生じることをいいます。顔面では眼や口の周囲や頬の下部に生じます。たるみを改善させるには、やはり美容整形で行われているフェイスリフトなどの手術療法が一番有効で効果の持続も期待できます。一方、近年ではレーザーや高周波電気エネルギーを用いた、たるみとり術も進歩しており、様々な機器が発売されています。これらは、皮膚の深部にまで熱による刺激を与え、たるみを改善させ、肌を引き締めます。
しわはその性状から@角質層の乾燥によっておこる乾燥性のしわ、A目尻などにみられる、カラスの足跡とよばれるような小じわ、B額や頬に見られる長くて深いしわ の3つに分類されます。@は、主に角質層の乾燥が原因となるため、保湿力の高い化粧品の使用により、予防、改善が可能です。水分保持能が非常に高いヒアルロン酸を含む基礎化粧品の使用がおすすめです。AやBのしわに対しての治療はヒアルロン酸やボトックスの注入療法が有効です。ボトックス注射は表情の変化で出来るしわ(眉間のたてじわや目尻の笑いじわ、額の横じわなど)に有効です。ボツリヌス菌毒素製剤を表情筋に少量注入して、筋肉の活動亢進を抑えます。そうすることにより、皮膚は滑らかになり、しわが改善されます。
しわに対する注入療法は大変有効ですが、美容皮膚科の患者さんの中には、「しわは気になるけど、注射は痛いし、そこまでは希望しません。」といわれる方がたくさんいらっしゃいます。そのような方を対象に現在おすすめしているのが、エレクトロポレーションという治療です。
エレクトロポレーションとは電気穿孔法ともよばれており、最近注目されている治療です。針の代わりに皮膚正面に特殊な電気パルスをかけることにより一時的に皮膚に隙間をあけ、有効成分を浸透させる治療です。これまで、ビタミンCやプラセンタ、トラネキサム酸などの電気的にイオン化することができる成分はイオン導入治療により皮膚に浸透させることができたのですが、高分子量でイオン化しない成分である、コラーゲンやヒアルロン酸などは皮膚に浸透させることができませんでした。しかし、エレクトロポレーションは高分子物質を含む様々な薬剤、有効成分をダイレクトに皮膚に浸透させることができます。また、治療中の刺激も少なく、唇や眼の周りも治療可能です。
現在主に導入されている薬剤はアルジルリン、ビタミンC誘導体、コラーゲン、プラセンタ、ヒアルロン酸などです。アルジルリンとはとは植物から抽出されたボトックス様効果をもつ物質であり、しわを改善させる効果があります。プラセンタは胎盤から抽出されるエキスであり、美肌効果、抗炎症効果があるといわれています。これらの薬剤を患者さんの症状にあわせて数種類混ぜ合わせて導入します。治療はまず、顔全体に薬剤を導入し、その後、目尻のしわやほうれい線など気になる部分を集中的にケアし、30〜40分かけてじっくり導入を行います。患者さんの中には処置直後から肌のハリが改善したとおっしゃれるかたもみえますが、治療効果を保つためには1〜2週間に1回の施行をおすすめしています。効果は注入療法には劣りますが、患者さんの満足度は比較的高い治療なので、おすすめです。
これから、お肌の乾燥が気になる季節になります。また、紫外線もしわをつくる原因となります。しっかり保湿をして、紫外線を防ぎ、しわを増やさないように気をつけましょう。
[マリ皮フ科クリニック] 鈴木真理
Posted at 17時27分
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