2011年01月08日(土)
小麦成分配合の化粧品にご注意ください
皮膚科で扱うアレルギー疾患の中に「小麦依存性運動誘発アナフィラキシ―(アレルギー)」という病気があります。
これは、麺類やパンといった小麦を含む食事を摂取した後、運動や歩行により全身に蕁麻疹(じんましん)および血圧低下、意識消失などアナフィラキシ―症状をおこすもので、命にかかわる重症の病気です。
去年、小麦成分(加水分解コムギ末)配合の石鹸を使用していた20〜30歳台の女性、数例にこの症状があらわれ、厚生労働省は10月15日に注意を呼び掛けた文書を発表しています。
いずれも鼻アレルギーやアトピー性皮膚炎の既往があったとのことで、全例が加水分解コムギ末を含有する石鹸をおよそ2年間使用しており、洗顔後の顔のかゆみがあったとのことです。
厚生労働省は同成分を含む製品の製造販売業者に対し、小麦成分を含むこと・使用中の異常があった場合は使用を中止するよう製品に明記することや、全身性アレルギー発症例の連絡があれば速やかに関係機関に報告するよう通知していますが、なんらかのアレルギーの症状をお持ちのかたは石鹸以外でも小麦成分が含まれていることがありますので、化粧品を選ぶ時には、小麦成分(加水分解コムギ末)が含まれている製品かどうか、充分注意なさることをおすすめいたします。
[西井皮膚科クリニック] 西井貴美子
Posted at 19時28分
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2009年11月28日(土)
まつ毛が長くなる薬について
最近、ファッション誌の広告に「まつ毛が太く長くなる」という治療薬の広告を目にします。
FDA(米国医薬品局)が世界で初めて承認したまつ毛貧毛症治療薬です。
昨年末、このニュースが流れると、日本では薬事未承認の医薬品であるにもかかわらず、インターネット上でこの薬に関するサイトができ、個人輸入によって使用しているかたもいます。
確かに、まつ毛が長く、太く、濃くなるのは魅力的です。
しかし、いい面だけが宣伝され、瞼の色素沈着や、感染症などの副作用は隠されている現状があります。
そこで、元東京大学医学部形成外科教授で、現在杏林大学形成外科教授の波利井 清紀先生が中心になり、まつ毛の美容に使用される薬剤の適応、効果や安全性について臨床研究を行い、 まつ毛貧毛症に対するより良い治療法の研究を目的とした研究会が設立されました。
夏に開催されたこの研究会に私も参加してきたのですが、次のような情報がありましたので、皆様に御報告いたします。
まつ毛貧毛症治療薬
主要成分:ビマトプラスト(プロスタグランディンF2アルファ誘導体・・
緑内障の薬として使用される成分)
効能:毛周期における成長期の延長・・まつ毛の長さの伸長
休眠状態にある毛包の刺激・・まつ毛の厚みや太さの増加
メラニン合成の活性化…まつ毛の色素沈着・・まつげが黒くみえる
副作用:
眼障害:結膜充血、眼のかゆみ、刺激感、乾燥、眼瞼の赤み、乳頭症
皮膚及び皮下組織障害:皮膚色素沈着
禁忌:ビマトプラストまたは本剤に含まれる他の成分に過敏な人
広告ではどうしてもいい面だけが強調され、副作用については記載がないことが多いのです。
研究会の討論でも、まだまだわからないこともあるので、慎重に使いましょうという結論に終わりました。
元来、緑内障といって、眼圧が高くなり、視野に異常がでたり、失明にまでいたる病気の治療に使う薬が成分ですので、眼圧が正常な人に使うとどうなるか?ははっきりしていません。
もし、この薬でまつ毛を長くしたいと希望するかたがいらっしゃいましたら・・
インターネット販売ではなく、この薬を取り扱っていて、アフターケアをしっかりしてくれる(勉強している)医療機関で購入されることをお勧めいたします。
[西井皮膚科クリニック] 西井貴美子
Posted at 14時24分
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2008年10月29日(水)
秋から冬のスキンケア
残暑もようやく終わり、さわやかな秋の訪れとともに外来にはお年寄りに多かった皮膚の乾燥・かゆみを訴えて受診する若い女性が増加してきました。
皮膚のうるおいは、皮脂・天然保湿因子・角質細胞間脂質という3つの物質によって一定に保たれているのですが、空気が乾燥する秋・冬はやはり皮膚のうるおいが少なくなります。
汗をかきやすい時期と同じようにゴシゴシこすっていると、よごれだけでなく皮膚の一部までもなくなってしまい、皮膚はバリア機能を失い、ダニ抗原やホコリが侵入しやすくなったり、細菌やウイルスがついてじゅくじゅくしたり湿疹ができてかゆくなります。
また、ホットカーペットや床暖房の上でゴロゴロしていると洗濯物が乾くのと同じように皮膚のうるおいも失われていきます。
更に、フリースなどの化学繊維やウールは直接肌に触れると刺激を与えてかゆみの原因になりますから、綿やシルクなど柔らかい素材のインナーを着て刺激からお肌を守りましょう。
治療は、保湿剤やかゆみを止める塗り薬で行いますが、お風呂上りは、バスタオルで体を拭いたらすぐに、着替える前に外用することがポイントです。毎日続けていると、皮膚の乾燥が改善し、かゆくなくなってきます。アルコールや香辛料の強い食べ物も体が温まり、かみゆの原因になりますからできるだけ控えましょう。
ところで皆さんは摩擦黒皮症という病気をご存知ですか?
かゆいのは不潔にしているからと思ったり、気持ちがいいからといってナイロンタオル・ナイロンブラシでゴシゴシこすり洗いをしていると表皮の基底層という場所にあるメラニン細胞の働きが亢進し、メラニン色素が多くつくられるようになり、更にメラニン色素が基底層からその下にある真皮組織に落ちていき「青黒いしみ」になる状態を言います。
鎖骨・肩甲骨など骨直上では帯状に、上背・腰・腹など骨上部でないところではびまん性ないし網状に、側背では肋骨に沿って縞目上に、脊柱上では突起に一致して切手型あるいは縦長帯状に色素沈着を生じます。この状態になるとしみとりの外用剤では効かなくなってしまいますので日ごろから過度に洗いすぎるのはやめましょう。
健康な皮膚を保つには、洗浄、保湿、紫外線予防の3つが必要です。清潔にすることは良いことですが、こすりすぎると皮膚の乾燥をひきおこしたり、しみになります。正しいスキンケアーで若々しい肌を作りましょう。
紫外線は一年中地表に届いています。夏が終わったからといって油断せずにTPOにあわせた適切な紫外線対策をしましょう。
[西井皮膚科クリニック] 西井貴美子
Posted at 17時52分
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