フォトフェイシャルアクネス
フォトフェイシャルアクネスという、全く新しいニキビ治療器について説明します。世界初と言われていますが、ヨーロッパではもう使われていて、アメリカではFDAの承認待ちで、日本でも厚生労働省の認可が来年1月頃に取れるという話です。
今までのニキビの治療というのは、主に抗生物質の内服や外用、漢方薬・ビタミン剤の内服、それから数年前から盛んになったピーリングがあります。あまり多くは使われていませんが、女性ホルモンの系統、ピルのようなものや、メサルモンFみたいなものを、女性のニキビに使っていくというのが、日本で従来行われていた治療です。アメリカではその他に、イソトレチノインと言って、強力な内服薬が使えるので、重症の困ったニキビに使えるのですが、日本ではまず認可されないだろうという薬です。その他には、レチノイン酸の外用などを、難しい患者さんの治療に使っていましたが、それだけでは治らない方もいらっしゃいます。
ニキビはとても難しい病気で、ただニキビ桿菌の感染症と単純には行きません。バイ菌以外に、精神的なものや、ホルモン的なものや、スキンケアなど、いろいろな要因が絡まってニキビが悪くなるので、単なる感染症ではないところが、治療の難しさなのです。 従来の治療法をいろいろ駆使したところで、やっぱり治らない方は現実には存在します。
他に何か選択肢はないかと思っていたところに、8月にイスラエルの会社が作った光線治療器、フォトフェイシャルアクネスという名前が付いていますが、それが日本に入って来たのです。その器械のニキビを治療する原理ですが、レーザーではありません。インテンシブパルスライトの一種で、ある狭い波長領域幅の、青色の可視光線のバンドなのです。レーザーというのは波長が1個ですが、その光線はすごく細いナローバンドで、レーザーと違っていくつもの波長の束なのです。大体、410ナノメーター位の波長の前後で、紫外線領域に近いものですから、紫外線をできるだけカットする、ということが一番重要になります。そのランプは、ハロゲンランプの一種ですが、とても料金が高いものです。いかにして、紫外線の混入を防ぐかというのが、工夫のしどころだったらしく、それが特許になっていて、非常に高額な器械として登場したわけです。すごく高額な器械ですので、そんなに急速に日本中に普及するとは思えませんが、もっと安い国産のものが出て来れば、話は別でしょう。
どうしてニキビに効くかということになりますが、ニキビ桿菌の特性として、ブドウ球菌とか他のバイ菌と違って、ポルフィリンという物質を持っています。ニキビ桿菌のポルフィリンが、フォトフェイシャルアクネスの出す青色の光に当たると、ポルフィリンが刺激を受けて、いわゆる活性酸素を発生して、ニキビ桿菌自身を殺してしまうように働きます。結局、それによって、ニキビ桿菌は自滅してしまい、駆除できるという理屈です。ポルフィリンというのは、普通はヒトの細胞は持っていなくて、病気のときポルフィリンが血液の中に増えることはありますが、正常の状態ではヒトの細胞や血液の中にもありません。ですから、ニキビ桿菌だけを駆除して、人間にはダメージを与えません。ただし、ニキビに二次的に感染することもある、ブドウ球菌というバイ菌は、ポルフィリンを持っていないので、フォトフェイシャルアクネスでは死にません。ですから、この器械が100%ニキビに効くわけではないという理屈になります。今までのデータだと、70〜80%の効果があると言うことです。
強い ピーリングを行うと、皮膚がダメージを受けることがありますが、この治療は光を10分間当てるだけなので、妊娠している人や、薬のアレルギーがある人でも使えます。ピーリングのようにピリピリ感もなく、ほわっと暖かくなるだけですから、すぐにお化粧して帰れますし、通常の生活を制限しません。薬を飲むことの副作用は、薬疹もあるでしょうし、カンジダになったりすることも、抗生物質を長期に飲むことによって、肝臓の機能が悪くなることもあるでしょう。そういうことを考慮しなくて済みます。もちろん、その青色の光に対して光線過敏症という、ごく少ない特殊な体質の人には使えませんが、それ以外の通常の人には副作用がないと言っていいと思います。
1ヶ月ほどの間に、50人位の患者さんに使いましたが、全く効かなかったという人はいません。母集団としては、こじれたニキビの方で、いろんな治療をしてみてもどうも思わしくない、治りにくい難しいニキビの方のみを集めて、50人弱をやってますから、それにしては効いていると思います。経済的な負担もありますから、通常の治療でさっと治るニキビは、通常の保険の効く治療でいいわけですが、フォトフェイシャルアクネスの適応症としては、本当に何をやってもダメだった方、もしくは早く治りたい方です。文献によりますと、通常の治療の1/3くらいに、治療期間が短縮できると書いてあります。
