種類にあわせて適切に!シミの症状と対処

ケア 2004年4月号から引用
山家英子先生が取材を受けた「ケア」の掲載記事です

 いつまでも若さを保ちたいと願い、シミなどの治療で皮膚科を受診するお年寄りが増えているという。最新のシミ治療やその安全性について、やんべ皮膚科クリニック(札幌市中央区)の山家英子院長に聞いた。

シミやアザの種類を見極めることが大切
活動的に過ごしたいと願う一方で、老化などに伴う肌の変化という現実に、憂うつな気分になってしまう人はいないだろうか。
最近、シミなどメラニン色素の治療で皮膚科を受診するお年寄りが増えているという。
「生涯現役を目指す人にとって、外見も若々しく保ちたいということは切実な願いだからこそ、治療の需要が多いのではないでしょうか」と語る、山家院長。
シミの種類によっては気軽に行える治療もあるという。
「シミといっても種類は多く、治療にはその正体を見極めることが肝心です。老人性色素斑、肝斑、雀卵斑(ソバカス)、炎症後の色素沈着、茶アザ、後天性両側性太田母斑様色素斑、光線性花弁状色素斑などがあり、原因となるメラニン色素が肌のどの深さにあるかなどで、適した治療方法は異なります」。

アザやシミに効果的なレーザー治療
色素沈着の治療はレーザーを使って行われることが多いという。シミでは、雀卵斑(ソバカス)、老人性色素斑、脂漏性角化症、光線性花弁状色素斑。あざでは、太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑。その他では外傷性色素沈着症、刺青などにレーザーの効果が期待できるという。
「シミのもとであるメラニン色素が表皮にある場合は、肝斑など一部を除き、レーザー照射が効果的です。メラニン色素が光線に吸収されてシミが消えます」。
また、真皮のメラニンには、特にQスイッチというタイプのレーザーが適していて、メラニン色素だけを破壊します。これらは安全に行える治療法ですが、治療後の皮膚は軽いやけどの状態になるので、軟膏を塗りガーゼをあてて患部の安静を保ちます。やがて茶色のかさぶたになり、約一週間ではがれてピンク色の肌が現れます。この肌はとても繊細なので、再度の色素沈着の原因となる紫外線から守るために、二、三ヵ月間は日焼け止めクリームを塗ってケアをする必要があります」。

新しいスキンケア治療フラッシュランプ
一方、顔表面にある細かなシミに効果が期待できるフラッシュランプという治療が、最近注目を集めているという。薄いシミやくすみ、特に厚みのない老人性色素斑や雀卵斑(ソバカス)に有効で、肌の表面(角質)に効く短い波長、表皮に効く中間の波長、コラーゲンを作る繊維芽細胞を活性化したり、赤ら顔のもとになる毛細血管に作用する長い波長などといった、多種類の波長の光の束を一度に弱く照射できるのが特徴。
「顔全体に専用のジェルを塗って十五分程度光を照射し、その後水で洗顔をします。照射時間は十五分くらいです。照射後はすぐにお化粧をして帰ることができます。アフターケアは特に必要ありませんが、UVケア用品やシミに効く薬剤(トレチノイン、ハイドロキノンなど)を使用すると相乗効果が得られるでしょう。一週間が経過すると照射したシミの部分が薄いかさぶたになり、やがて自然にはがれて徐々に明るい肌になります(場合によっては、かさぶたができないこともあります)。一回できれいになる場合もありますが、二、三週間ごとに五回程度受けると、より効果が現れるようです。
フラッシュランプは、レーザーだと痛みを伴い、アフターケアも難しそうだと治療をためらっている人でも、気軽に受けることができます。治療中の痛みは少なく、部分麻酔の必要はありません。治療後も普段と変わらない生活を送ることができ、患者さんにも喜ばれています」。

マイルドな効果が期待できるレーザーピーリング
また、従来のレーザーで行う治療も、ダメージが軽い「レーザーピーリング」という、フラッシュランプに準じたマイルドな効果が期待できるように改良されたものもある。墨の入ったジェルを患部に塗り、パワーを弱めてレーザーを照射するもので、美容用に工夫された治療法だという。照射後、アイスパックなどで五分間程度患部を冷やした後は、フラッシュランプと同じ様にお化粧をして帰ることもできるという。
「フラッシュランプもレーザーピーリングもダメージが少ない分、レーザー治療に比べて作用は穏やかで、永久性はない場合もありますが、治療後のケアで効果を持続させることは不可能ではありません。以前は痛かったこれらの治療法は機械が改良され、痛くなく副作用の少ない治療法になりました。美白化粧品とレーザー治療の中間の治療法として、気軽さが好評で、これからもより優しい治療法として改良されていくでしょう。
これらの治療の多くは保険外診療ですが、レーザーの種類によっては太田母斑など保険内で治療できるものもあります。もしも肌が原因で積極的に行動できないなど悩んでいるなら、皮膚科で相談してください。シミの種類を判断し、症状に合った効果的な治療法をアドバイスしてもらえるでしょう」と、山家院長は話す。

〜メラニンが皮膚の浅いところ『表皮(角質も含む)』にあるシミ〜
1.脂漏性角化症:主に脂漏部位にできるイボ状にもり上がった表面がざらざらしたシミ。色も正常皮膚色から淡褐色、黒色などさまざま。老人性イボといわれる。
2.老人性色素斑(厚みあり):皮膚表面がやや厚くざらついている。日光にあたる部位に多く、淡褐色から黒褐色までの境界明瞭な色素斑。40代以降に多い。
CO2レーザー、ルビーレーザー、Qスイッチレーザーなどが有効。フラッシュランプ、美白剤は効かない。
3.老人性色素斑(厚みなし):40代から多くなる、境界明瞭な類円形の色素斑。直径10mm〜20mmくらいが多い。頬やこめかみにできやすい。
4.ソバカス(雀卵斑ーじゃくらんはんー):数mmの小さなシミが、主に頬上部に多数散在する。薄茶色や黒茶色。思春期頃に出現し、紫外線で悪化する。遺伝性があるともいわれる。
5.光線性花弁状色素斑:肩から上背部に左右対称に生じるコンペイ糖状や花弁状の色素斑。過去に海水浴で日焼けを楽しんだ人に多い。
ルビーレーザー、Qスイッチレーザー、フラッシュランプ、美白剤などが有効。
6.肝斑(かんぱん):顔(額、頬、口の周りなど)に左右対称にできる淡い褐色の斑で、大きさはさまざま。紫外線で悪化する。女性ホルモンが関係しているともいわれる。
レーザー、フラッシュランプでは悪化することがある。外用美白剤とトラネキサム酸の内服がおすすめ。

〜メラニンが皮膚の深いところ『真皮』にあるシミ〜
7.後天性両側性太田母斑様色素斑:主として中年以降の女性に初発。紫青色がかった大小不同の小さめの色素斑が前額の左右両端、頬、まぶた、小鼻に好発する。一見、肝斑のように見えることもある。
8.ソバカスやクマのように見える太田母斑:思春期以降に著明となる。ソバカスやクマのように見えても、病理組織は太田母斑そのもの。普通のソバカスより少し青みがかっている。
Qスイッチレーザーが有効。フラッシュランプ、美白剤は無効。

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